ウクライナ戦争がどういう結末になっても待っているロシアの残酷な未来

ロシア中央銀行は、専門家らによる経済予測を集計して発表している。最新の集計結果によれば、ロシアの経済成長率は、2022年がマイナス2.9%、23年がマイナス2.4%と予測されています。  むろん、経済下落には違いないが、22年春頃には、同年の経済が8~10%落ち込むとの予想もあったため上掲の数字だけを見れば、意外に傷は浅かったという印象になってしまう。

しかし、北海道大学のロシア経済専門家服部倫卓氏によると実態は違うとのことです。

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ロシアの残酷な未来

戦争は国家最大の公共事業であるという言葉があるように戦争になると軍事物資が大量生産されるため、GDPが増加します。また、ロシアへの輸出を企業は信用リスクを考慮して減少させたことで、国内で生産する必要に迫られ、国内製品の生産が増加した結果としてロシアのGDPに影響が出ていないようにみえるわけですね。

しかし、戦争特需によるGDP増加も国際競争力を持たない国産製品も長期的には政府債務とガラクタが残るだけで中期的には何の役にも立ちません。

また、ロシアルーブルの価格が下がっていないことも同様で、戦争がはじまるとまずは国民生活において必要となるのは物資の確保であり、結局は現金が必要となります。そこでロシア人は金融資産を売りルーブルに変えることで生活を成り立たせているため、ルーブルは今のところ価値を保っているだけで決してロシア経済が堅調なわけではありません。

ちなみに日本がもっとも円高になったのは東日本大震災の後であり有事の通貨高という現象は珍しくありません。

現在のロシアは金融資産など持っていても仕方がないほど経済的に先が見えない状態ともいえるでしょう。

また、ロシア側の死傷者は最大20万人、100万人が予備役として戦時投入へ準備されている一方で500万人が国外脱出しているとのことです。

国外脱出できるのは知的エリート層なので、将来ロシアの頭脳となるはずのエリートが流出しています。

ロシアの人口は1,4億人で労働力人口は6000万人程度ですから、ロシアは戦争と国外脱出で労働力人口の約15%が失われた状態となっています。

また、ロシアの出生率は1.5と自然人口維持の2.1を大きく下回るため、次世代の数は少なく、戦争状態が長引くなら子供も優秀な人材は海外に流出して労働力人口はさらに減少していくでしょう。

服部氏によると

今日のロシアで戦車を生産できるのは一箇所だけで、スヴェルドロフスク州にある「ウラル鉄道車両工場」のみである。2月にウクライナ侵攻を開始した直後、ロシア政府は同社に400台の戦車を発注したという。 ところが、ウラル鉄道車両工場の非力ゆえ、戦車の新規生産は年間250台が精一杯だという(これ以外にも旧モデルの改良や修理も行っている)。生産工程の多くが手作業に頼っている上に、熟練工も不足しているとのこと。

ロシアの軍需産業が、欧米日による制裁圧力にさらされ、思うように稼働できていないことは、まず間違いないところ。

しばしば指摘されるとおり、産業の米といわれる半導体をほぼ全面的に輸入に依存するロシアにとって、先進国からの輸入が止まった打撃は計り知れません。実は以前からロシアに半導体を輸出している最大の供給国は中国であり、中国は対ロシア制裁に参加はしていないが、他の国からの供給途絶分を中国が補うのは、質・量ともに不可能とのことです。

服部教授はまた、「ある意味で、ロシアおよびその勢力圏が衰亡の危機に直面していることは事実だろう。 しかし、それをもたらしているのは、欧米の陰謀ではあるまい。ロシア自らの魅力の欠如である」とも指摘しています。

しかし、NATO高官は「ロシアは敗北したとしても、同じような野望を持ち続けるだろう。脅威は消えてなくならない」と強調している。

ちなみに防衛省は、音速を超える速度で滑空する「高速滑空弾」を運用する部隊を陸上自衛隊に新たにつくり、九州と北海道への配備を検討。さらに在日米軍の中距離弾道ミサイルを北海道に配備することも検討していることを明かしていますが、北海道にミサイルを配備する理由は対ロシアではなく、対中国です。

ロシアは西側の領土拡大のために極東は手薄となり、日本にとっては脅威は減少。ロシアに気を遣う必要がなく安心して北海道にミサイル配備できるわけですね。

北方領土交渉のためにロシアへ気を使っていた安倍政権で棚上げされていた、北海道の対中ミサイル配備が一気に進んだのはロシアと領土交渉などしても無駄だと方針転換したからでしょう。

EUはロシアと隣接するフィンランドをNATOに加盟させるなど、他の国もロシアに気を遣わずに軍備を一気に拡張させており、ロシアは八方塞がりとなっています。

また、ロシアの主要産業であるエネルギーも、欧州では再生可能エネルギーの割合が急増しており、技術的な進歩によって先進国は時間の問題で化石燃料への依存度は下がっていくため、長期的にはエネルギー価格は減少していくでしょう。

ロシアはウクライナ侵攻がどんな決着になっても国際的にも政治的にも経済的にも、何の希望もないことに変わりはありません。ウクライナの東部地区の領土がどちらのものになろうが、ロシア崩壊は既定路線です。

ネットの声

日本のそれなりの有識者でもロシアが経済破綻する見解を述べる人がいるが、食料大国でエネルギー資源大国、かつ軍事大国のロシアが経済破綻などするだろうか?

 

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