原油価格急落で産油国がピンチ。石油輸出国機構OPECも分裂か。産油国に未来なし?
ニューヨーク原油市場ではアメリカでガソリンの在庫が増加したことを受けて原油の供給が需要を上回るとの見方などから国際的な原油の先物価格が下落し、5か月ぶりに一時、1バレル=70ドルを割り込みました。WTIの先物価格は先月30日、サウジアラビアやロシアなどの主な産油国でつくるOPECプラスが追加の協調減産で合意できなかったことから市場関係者は「OPECプラスが一致して減産に踏み切ることは当面、難しいのではないかとの観測が出ていることも原油価格の下落につながっている」と話しています。
ロシアーウクライナ戦争の影響で1バレル120ドルと急騰した原油価格は、イスラエルーパレスチナ紛争の拡大懸念から再び上昇していましたが、それ以上に下落圧力が大きく、70ドルを割っています。
原油価格が下落する3つの理由
原油価格下落の原因の一つが、シェール革命。アメリカは2014年にシェールオイルが採掘されてからいまや世界一の石油生産国となりました。アメリカの地下にシェールオイルがたまたま眠っていたわけではなく、世界中にシェールオイルが発見されていますが、取り出す技術を持っているのがアメリカだけでした。現在ではその技術を他の地域にも転用する動きが活発になっており、アメリカ、カナダ、ブラジルやインドネシアといった新興産油国が中東とロシアを中心とした石油の価格決定権を奪っています。
二つ目の理由が途上国の経済成長の鈍化です。
シェール革命の後も石油の価格が大きく崩れなかった理由は中国に代表とされる途上国の急速な近代化により原油消費量が増加したからです。しかし、中国を中心に経済成長は減速しており、多くの途上国と呼ばれた国が、近代化をある程度成し遂げてしまったために成長余地が少なくなっており、石油の消費量は減少しています。
日本は1990年代の高度経済成長期に石油の消費量はピークを迎えて、1990年代半ば以降は、石油代替エネルギー利用の進展や自動車の燃費向上等により減少基調で推移し、現在はピークの半分の消費量となっています。2011年東日本大震災の影響で原子力発電がストップして火力発電の割合が増えた時期以外は、右肩下がりに推移しています。日本の場合は、ここから人口が減少していき、原子力発電も再稼働していく予定なので、さらに減少していくでしょう。
日本が高度経済成長期から30年で半分になったことを考えると、中国やその他の新興国も今後30年で石油の消費量を一気に減らす可能性があります。石油が必要な近代的な社会に暮らす人口はこの先減少に転じるため石油の需要は増えそうにありません。
3つ目の理由が自然エネルギーの登場です。
太陽光発電や風力発電は現在はエネルギー事情を大きく覆すインパクトは今のところ見られませんが、数十年単位で見れば技術が進化していき、日本や欧州のように化石燃料の資源に恵まれていない国は、徐々に化石燃料に頼らない社会を実現していくでしょう。
一方で、サウジアラビアは国家財政が均衡する水準が1バレル85ドルといわれています。石油のおかげで豊かな暮らしができていた国は協調して価格を保ってきましたが、ロシアの影響力が低下して戦費調達のために裏ルートで石油を安く売っているため、他の国も言うことを聞く理由がなくなってきています。石油輸出国機構OPECは機能不全に陥っており、中国の高度経済成長期が終わった今後を見据えると産油国には明るい未来は見えません。
ネットの声
東京都区部の消費者物価指数は前年同月比で2.3%上昇、食料品とエネルギーの上昇率が鈍化する一方、サービスは約30年ぶりの高水準に。宿泊料は観光需要の回復で62.5%上昇。電気・ガス料金の抑制策や石油元売りへの補助金拡充でエネルギーは16.7%下落となった。
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