水素社会に移行する世界で日本が進む道は?~日米連携事業が進行中

政府は次世代の脱炭素エネルギーとして期待する水素の普及に向け、天然ガスなど既存の燃料との価格差を補う支援に15年間で3兆円を投じる。割高な水素のコストを抑えて普及を狙う。2023年度から政府が発行するGX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債を活用するとのこと。水素は燃料として自動車や発電所向けに利用を想定するほか、製鉄工程の脱炭素といった産業利用を期待されている。水を電気分解してつくる水素の活用も進んできています。

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世界が水素に注目。

バイデン米政権は13日、全米7カ所を水素の生産拠点として選定したと発表した。70億ドル(約1兆円)を助成し、温暖化ガスを排出しない次世代エネルギーとして期待される水素の活用を後押しする。経済の脱炭素化を促して「水素大国」を目指す。三菱重工業のプロジェクトも選定され、日本への輸出を視野に入れます。

水素は燃焼しても温暖化ガスを出さないため長距離トラックや工場の熱源といった電化が難しい分野での活用が期待されています。

さらにバッテリー貯蔵よりも水素貯蔵の方が低コストであるため再生可能エネルギーの弱点を水素が補うことができます。

カリフォルニア州やテキサス州、ペンシルベニア州など16州にまたがる7カ所の「水素ハブ」。1カ所あたり10億ドル前後の公的資金が投じられる。ホワイトハウスによると、民間資金も含めると官民で合計500億ドル近くが投資され1カ所のハブには複数の生産プロジェクトがあり、日米欧などの少なくとも数十社が計画を進めています。米エクソンモービルなど石油会社や電力会社、液化天然ガス(LNG)会社など幅広い業種の企業の計画が選定された。三菱重工は2カ所の「水素ハブ」で事業を計画しており、製造設備の納入も視野に入れる。IT(情報技術)大手のマイクロソフトやアマゾン・ドット・コム、欧州鉄鋼大手アルセロール・ミタルといった水素の需要家も製造事業に参画する方針。

米国政府は30年に年1000万トン、50年に年5000万トンの水素製造を目指す。50年の目標を達成すれば21年の世界の水素需要のおよそ半分に匹敵する規模となる。

米国では水素を運搬しやすいアンモニアに変換して、日本と欧州に輸出する計画も相次ぐ。大規模な公的支援を受け、脱炭素エネルギーの生産・輸出国としても米国の存在感が増しそうです。

COP28でアジアの脱炭素化を主導する考えを示しました。今後エネルギー転換を進める新興国の脱炭素化に日本企業の水素技術を生かしていくことは、世界的な課題を解決するという意義もありますし、ビジネスチャンスとしても大きなものになります。米中対立など世界的に分断が進む中で経済安全保障の面でも重要な意味を持ってくるのではないかと思います。

日本では2017年12月に世界で初めて「水素基本戦略」が策定されました。世界的にも水素戦略が早くから打ち出されてきたことがわかります。6年ぶりの改訂によって、今後15年間で15兆円規模の投資をし、2040年に現在の6倍の1200万トンの導入量を目指す、という方向性も見えてきました。エネルギー自給率9%、資源大国ではない日本が、次世代エネルギーの水素で世界をリードするという目標に向けて、官民の今後の動きが期待されます。

ロシアーウクライナ戦争によりエネルギーショックが起こり、化石燃料への依存するリスクが顕在化しましたが、再生可能エネルギーを電気に変換するだけでは不便も大きいことが理解され、水素が注目されました。わかりやすい例は電気自動車で、充電に時間がかかり、バッテリーは重いうえに希少資源を必要とします。航続距離は短く使い勝手が悪いため、現状では普及していません。

水素であれば、航続距離は長く、液化して運ぶことができるので、現在のガソリンスタンドと同じ方法で輸送することができます。

 

ネットの声

関西電力は和歌山市で計画していた火力発電所の建設を中止する方針を固めた。原子力発電所の再稼働で電力の供給能力を確保できており、二酸化炭素(CO2)を排出する火力の新設は必要性が薄まっていた。原発の再稼働で収益力が高まったこともあり、水素や原発などに経営資源をシフトする。

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