北海道で再生可能エネルギーが急増も課題は山積

最新のデータが公表されている2022年度。全国で再生可能エネルギーの占める割合は21・7%でした。政府は野心的な目標として2030年までに36%を設定しています。

再エネ発電の比率は、ここ10年間で10%ほど上昇しているので不可能な目標でもないですが、すでに発電しやすい場所は使用されているため、このペースで今後も成長するかどうかは不透明です。

再エネの主軸は太陽光発電です。太陽光発電は全国規模で発電能力を増やしており、発電量は2020年度に水力を逆転。22年度も火力に次いで2番目に発電量の大きな電源になっています。

あまり知られていないかもしれないが、国土面積あたりの日本の太陽光導入容量は主要国の中で最大であり、さらに、平地面積でみるとドイツの2倍にまで拡大。

この流れを受けて、北海道で再生可能エネルギーの発電量が急増しています。先行事例から見えてくる再生可能エネルギーの可能性と問題点に迫ります。

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人口密度の低さが要因?北海道の再生可能エネルギーのポテンシャル

環境省が発表した潜在的な再エネの資源量は、都道府県別で北海道は風力、太陽光、小水力でいずれも1位、地熱でも3位と、突出しています。

なぜ北海道の再エネの資源量が大きいかというと、単純に広いからです。太陽光は日照時間が長い九州の方が発電効率は高いですが、単に北海道の方が2倍ほど広いので資源量は大きくなります。

風力発電は地理的に恵まれていますが、他の再エネに関しても北海道の強みは単に広いことです。

それでは北海道で今の段階で再エネがどのくらいの存在感を示しているのでしょうか。

2016年から23年まで、毎年10月の北海道エリアの発電電力量に占める再エネの割合を調べてみると

このように40%程度を再エネで賄っていることがわかります。最近はわずか2年で再エネの占める割合が10%以上高くなって、とくに太陽光と風力、バイオマスの割合が急ピッチで高まっています。

最近はわずか2年で再エネの占める割合が10ポイント以上高くなっていました。とくに太陽光と風力、バイオマスの割合が急ピッチで高まっています。

現在は泊原発が停止中ですが、再稼働に向けて手続きが進行中。泊原発が稼働すると北海道の40%の電力が賄われるので、化石燃料を使用した発電量はほぼゼロに近くなります。

2030年には北海道でゼロカーボンが達成するかもしれません。

再エネが増加することの弊害

エネルギーを輸入に頼らなくて済み、環境にも良い再エネにも問題点があります。

再エネの問題点は季節による変動が激しいことです。昨年の月別の発電量を見てみると

太陽光と風力の発電量が増加する4,5月は全体の60%を再エネで賄えていますが、最も少ない1月は30%台となっており半分まで落ち込んでいます。

需要と供給を一致させなければいけない電気。一方で、主力の再エネである太陽光や風力は「お天気任せ」なのがよくわかるグラフとなっています。

太陽光は天気が悪くなれば、発電量が少なくなりますし、そもそも夜は発電できません。風力も風がやんでしまうと発電できません。しかし、需要は天気とは関係なく生じます。

ここまで再エネの比率が高まった北海道では、再エネを発電しすぎ問題にぶち当たってきています。

今は再エネの発電量が少なくなった場合には、火力発電所などの稼働を増やして対処していますが、再エネの割合が増えれば増えるほど調整が難しくなります。

送電網の問題は深刻です。

送電線は整備に多額の費用がかかるため、電力需要が少ない地域はもともと送電線が細くつくられており、送電線がない、あっても細くて大量の電気を送れないため、せっかく再エネ発電のポテンシャルがありながらも投資できないという事態が相次いでいるのです。

「再エネの壁」に北海道はすでにぶつかりつつあり、ベースロード電源として原発、火力発電の必要性が再認識されています。

動き出す電力供給方法の変化

これらの「再エネの壁」の解決策として3つの手段がすでに進行中。

1つ目は蓄電池です。

発電して余った電力を充電しておいて、発電量が減る夜や冬に使用するという形です。グローバルエンジニアリング(福岡市)と米テスラは、北海道千歳市に日本初の蓄電池発電所「北海道・千歳バッテリーパワーパーク」を建設し、電力の需給調整を始めています。株式会社GSユアサは、北海道北部風力送電株式会社向けに納入した世界最大規模の蓄電池設備が、2023年3月から稼働を開始しました。

2つ目は水素です。

北海道全土に送電線を張り巡らせることは無理があるので、余った電気は水素に変換して札幌のような人口密集地や大規模工場で使用するといった計画が進んでおり、北海道は全国でももっとも水素の利用に力を入れています。苫東厚真火力発電所の横に水素発電施設が建設。将来的には風力などの余剰発電分を水素に変換して火力発電で使用することで電力供給の安定化を図ります。出光興産は北海道製油所(北海道苫小牧市)で製造時に二酸化炭素(CO2)を出さないグリーン水素を使った合成燃料の実用化を目指し、 2030年までに製油所などで排出するCO2とグリーン水素を合成した液体燃料をつくる計画。

 

3つ目は本州に海底ケーブルで電気を送ることです。

北海道や東北で再生可能エネルギーによって発電した電気を東京に送るため、新しい海底送電線の整備計画で2030年までに日本海側を通り、200万キロワットの電気を送れるようにします。

そのため、北海道の洋上風力発電事業には関西電力をはじめ、国内外の大手資本が続々参入しており、経済産業省は2030年に385万キロワットの発電が可能と推計しています。北海道全体の電力消費量が400万キロワットなので、余った電力は本州に送ることを前提とした計画です。

カーボンニュートラルと聞くと理想論のように聞こえますが、北海道では現実的に可能な目標となってきています。北海道の再エネのポテンシャルは人口密度の低さからくるので、今後日本全体で人口が減少して土地が余ってくることを考えると、北海道のように全国でも再エネの比率が増えてくるでしょう。

日本はエネルギーがないことが戦前から大きな弱点だったことを考えると、エネルギーを自給できるようになることは経済や安全保障の観点からも大きな利点を生み出すことになるでしょう。

https://twitter.com/guritorakun/status/1757902541470220582

ネットの声

半導体、データ・AI、合成燃料生産、さらには周辺の農畜産業を脱炭素化できれば、世界的に見ても先進的な取り組みになります。

容量市場で北海道の供給力不足が示されていたように、北海道の本質的な課題は電源老朽化と電源不足。ラピダスの量産開始以前に供給体制に課題があり、泊再稼働は肝要。

 

 

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